願いは一つ（後編）

５日の夜９時頃、翌日のゴミだしの準備をしていた母の横で、チコは虫を
相手に遊んでいたそうです。
それが、チコを見かけた最後となりました。
今までも、２～３回ほど朝帰りしたことはありました。

翌朝、チコの帰ってきたコールを聞き逃さないようにと思っていたので、早く
目が覚めました。

待っても、待っても帰ってきません。

家の中で待つことが苦痛になってきたので、私は恒例の”網戸の張替え”
を、庭で始めました。

日が暮れて、夜になっても帰ってきません。
私はチコの帰りを見届けることなく、深夜自分の家に帰りました。

５月７日、休憩時間・終業後・夜と実家に電話をしましたが、私の期待する
答えはかえってきませんでした。

父の「必ず帰ってくる」という言葉は、私の耳には届きません。
不安で不安で、事故にあっていないか、危ない物を食べていないか、怪我
をして動けないのではないか、悪い方へしか考えられませんでした。
「私は誰ひとり、幸せにすることができない！」と思うほど、自分を追い込ん
でしまいました。

５月８日の午前１０時、「ニャン、ニャン」と声を上げて帰ってきた
と、メールが携帯に届きました。

チコ）とおでちまちた


チコ、お家は居心地悪いの？
チコは大事な家族です。
マロンやチロのことに気をとられていたけど、あなたのことを忘れていたの
ではないのですよ。
お外で遊ぶのはいいけど、ちゃんと帰って来てくださいね。

チコ）そとはたのちいことがいっぱいでちた


私の願いは一つです。
３兄弟が幸せであること、これが私の願いです。


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